2012.4.19 シンポジウム開催

 2012年4月19日、経団連会館において、「TPP交渉への早期参加を求める国民会議 シンポジウム」が開催され、経営者、企業人、学識者、労働組合、農業関係者、学生など500余名が参加しました。
 シンポジウムでは、東京大学の伊藤元重教授の開会挨拶の後、外務省の片上慶一経済外交担当大使より、「TPP交渉の現状について」ご講演いただきました。
 また、政策研究大学院大学の白石隆学長の司会により、経団連の大橋洋治副会長、和郷園の木内博一代表理事、慶應義塾大学の渡邊頼純教授を迎えて、パネルディスカッションを行いました。
 最後に、アピール案が紹介され、賛成多数(参加者からの盛大な拍手)で採択されました(アピールはこちら)。

開会挨拶 伊藤元重氏(東京大学教授)動画はこちら

伊藤元重氏(東京大学教授)

  • 最近アジアの会議に出席すると、日本は何をしているのかと叱られることが多い。一方で、日本の長寿、省エネ技術、治安などについては賞賛される。
  • 世の中が変わるとき、政治や制度が社会を大きく動かすのは、成熟した国の本来の姿ではない。やはり民間の力が重要であり、企業や現場、そして国民一人ひとりの力が大事である。
  • TPPについても早期にまとめることは確かに大事だが、より重要なことは、これを機会に国民一人ひとりが国を開くとはどういうことかを感じ、考え、行動に移すことである。TPPをチャンスととらえ、各業界で成長につなげる方策を考えるべきだ。この波が日本全体に広がっていくことを期待する。

「TPP交渉の現状について」 片上慶一氏(外務省経済外交担当大使)動画はこちら   

片上慶一氏(外務省経済外交担当大使)

  • 政府は国民的議論を行うという目的のもと、TPP交渉の現状を客観的・中立的立場から説明してきた。
  • 日本が締結したEPA、FTAの数は主要国と比べても遜色ない。しかし、FTA相手国との貿易総額に占める割合を見ると、日本は中国、米国、EUなど主要国とFTAを結んでいないため、韓国や米国に大きく後れをとっている。
  • 経済連携協定における自由化率(10年以内に関税を撤廃する割合)を見ると、米国やEU等が100%近いのに対し、日本は90%未満。世界の潮流は100%に近く、日本は不利な状況にある。
  • 平成22年11月、世界との高レベルの経済連携を推進する「包括的経済連携に関する基本方針」が閣議決定された。食糧自給率の向上や国内農業・農村の振興を両立させ、持続可能な力強い農業を育てることも記されている。
  • 日本が目下注力するのは、アジア太平洋自由貿易圏(FTAAP)および日EU経済連携協定である。TPP、日中韓、ASEAN+3、ASEAN+6らは最終的にFTAAPの実現を目指しているが、TPPは唯一、交渉が開始されている。
  • 現在、TPPには9カ国が参加しており、APEC全体のGDPの約半分を占めている。昨年11月には、日本のほか、カナダ、メキシコも協議開始の意向を表明した。
  • オバマ大統領は2012年中に協定を完成させるよう指示しているが、実際は難しい交渉であり、いつになるか分からないのが現状である。
  • TPP交渉では21の分野が扱われているが、日本がEPA、FTAで扱ったことのない新分野は「環境」、「労働」、「分野的横断事項」の3分野である。
  • 日本のTPP交渉参加に対し、6カ国は無条件で参加を支持しているが、米国、オーストラリア、ニュージーランドの3カ国とは、包括的かつ高水準の自由化交渉に参加するという日本の政治的意思の有無が争点になっており、今後も協議が必要である。
  • (この後、分野別状況についても説明あり、詳細は資料を参照)

パネルディスカッション

【パネリスト】
日本経済団体連合会 副会長・経済連携推進委員長 大橋洋治氏
農事組合法人 和郷園 代表理事 木内博一氏
慶應義塾大学 教授 渡邊頼純氏
【モデレーター】
政策研究大学院大学 学長 白石 隆氏

白石学長 動画はこちら

白石教授

  • 一般的に、外交政策では、戦略レベルの決定と、それを踏まえた上での下位レベルの決定の2段階の形になっている。
  • 日本がTPP交渉への参加という戦略的決定を行う場合、①戦後60年以上に渡り享受してきた自由主義的な国際秩序の維持・強化に対し、日本は参加するのか、②21世紀のアジア太平洋地域の通商・自由化のルール作りに参加するのか、③日本全体でプラスとなるのか、という3つの側面から考える必要があるが、3つともYESであることは歴然としている。
  • 国内ではTPPを巡り様々な議論が生じているが、政府のリーダーシップに期待できない中にあっては、丁寧に議論し、理解しておくことが、逆に、実際に決定された後、色々な物事が進む素地となる。
  • 本日は、そのようなことも含め、経済界、農業界、学識界の代表者から見解を伺いたい。

(1)TPP交渉への早期参加の必要性

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大橋副会長

  • グローバル化が進む中、日本はFTAやEPAの締結を通じた経済連携の強化に大きく後れている。企業は不利な競争条件のもとでの輸出や投資を余儀なくされ、特に競争関係にある韓国とは厳しい競争を強いられている。
  • 日本にとって喫緊の課題は、一刻も早くこの状況を解消し、新たなルール作りを推進するため、主要な貿易・投資相手国との間で高いレベルの経済連携を実現することである。中でも世界の成長センターであるアジア太平洋地域との経済連携は不可欠だ。
  • そのためには、FTAAPの構築をリードする必要があり、その重要なステップの一つであるTPP交渉に一刻も早く参加する必要がある。同時に、日中韓FTAやASEAN+6、また日EU・EPAを併せて推進し、アジア太平洋地域にとどまらず、グローバルなルール作りにつなげていく視点も忘れてはならない。

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木内代表理事

  • 農業界はおそらくTPPの本質的な意味を理解していない。私は、TPPは、①チャンス、②農業界にとって最後の転機、という2つの側面があると考える。
  • まずチャンスだが、農業技術が日進月歩で進化し生産力が向上していく中で、少子高齢化により国内市場は縮小していく。日本にとどまらず、アジアや海外に目を向けた生産、供給を考えるのは自然な流れといえる。
  • 日本の食は、サービスも含め世界トップクラスのクオリティと評価されており、成長性が高い。日本の農業はTPPに反対しているが、流通、小売、サービスなどは、日本の農家が参加せずとも海外に出ていく。日本の農業者がそのビジネスの輪に加わり生産を担うのか、それとも国内に残るのか、最後の局面を迎えている。
  • 個人的には、異業種と連携して、日本の食産業、農業をグローバルに展開する機運が高まってきており、大きなチャンスであるととらえている。

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渡邊教授

  • TPPの意義として、①輸出市場へのアクセスを改善し、米国や豪州市場において韓国に劣後している状態を是正すること、②アジア太平洋地域における貿易・投資のルール作り、③FTAAPへのステップ、の3つがある。
  • これらを踏まえ、今なぜTPP交渉に参加するのか再確認したい。
  • 第一は、TPPにおけるルール交渉は待ったなしであるからである。日本の主張を盛り込むのであれば早ければ早いほどよい。
  • 第二は、日EUEPAや日中韓EPAなどにも好影響を及ぼすためである。日本の本気度がEUや中国を動かす。
  • 第三は、今年は政治の年であり、北朝鮮、中国、ロシアなどにおける政治的リーダーの交代は地域の不安定要因になるからである。日本は、米国や豪州との連携を強化し、盤石の態勢を構築すべきである。
  • 以上の理由から、日本はできるだけ早期にTPP交渉に参加すべきである。

(2)TPP交渉への早期参加実現に際しての重要課題と解決策

パネルディスカッション

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  • 国内では、デメリットや懸念が喧伝されており、どう対応するかが重要である。
  • 日本の農業が壊滅的な影響を受けるとの指摘があるが、日本は品質の高い作物を生産する技術を有しており、構造改革を推進すれば、高い国際競争力を実現できる。一方、高齢化や後継者難などもあり、TPPにかかわらず、国内農業の改革を推進し、競争力強化と成長産業化を図ることが重要である。
  • そのためには、新規就農や企業の農業参入などにより多様な担い手を確保するとともに、経営規模の拡大と生産性の向上が必要。また、農商工連携や農産物の輸出を促進し、農業の成長産業化を図ることも大切である。
  • TPP交渉への参加には、経済連携の推進と国内農業の強化との両立を実現しなければならない。経団連としては、昨年3月に会員企業各社が農業界と連携している事例集を発表し、農林水産省も昨年12月、「産業連携ネットワーク」を組織し、具体的な農商工連携の取り組みを進めている。
  • TPP交渉参加国との協議の結果、色々なことが分かってきており、懸念や疑問の中には誤解も多いことが明らかになっている。適切な情報提供と背景説明を行っていくことが非常に重要であり、経団連もパンフレットを作成した。
  • 様々な懸念が指摘されるが、まずは交渉に参加することが重要である。仮に国益に反する内容があれば、交渉の中で断固として拒否すべきだ。

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  • 農業界としては大きく3つあると考える。
  • 第一は、農業の実情を他産業や国民にしっかり伝えること。ここでは浅川芳裕氏の著書「TPPで日本は世界一の農業大国になる」を紹介したい。この本は賛成や反対に偏らず現状をしっかり書いてある。例えば、日本の農業は後継者不足と言われるが、実態は全く逆で、農業者はむしろ多すぎる。また食糧自給率は低いと言われるが、スーパーは外国産の農産品であふれているわけではなく、現実は供給過剰で余っている。
  • 第二は、日本の農産物の競争力について。確かに幾つかの高関税の品目についてはこれからイノベーションが必要だが、野菜や果物の関税は3~5%に過ぎず、花の関税はほとんどない。これらが農産物生産高8兆円の大半を占めており、実は、日本の農業は世界に対して可能性が高い。個人的には、解放された場合、一番輸出可能な品目はコメではないかと考えている。
  • 第三が一番重要だが、経営者があまりにも少ないことだ。生産者多数で経営者不在である。TPPにかかわらず早急に生産者から農業経営者を育てなければならない。

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  • 第一は、引き続きTPPについての理解促進を図ることである。農業の兼業率は72%(全国平均)と高く、その多くは製造業やサービス産業で働いている。日本がTPPに入れず、日中韓FTAも進まなければ、工場が海外に移転してしまい、実は地方の兼業農家の収入にも影響を与える。特に地方において、TPPに対する不安を払拭していく活動が必要である。
  • 第二は、農政改革のグランド・デザインを提示し、実現のための行程表を明らかすることである。日本の農業が問題なのではなく、問題は農政。また、食品加工業は関税により国際競争力を著しく弱められているため、TPP、EPAを通じて関税の低減、撤廃を図ることが重要だ。加えて、コメをはじめ輸出市場を開拓していくことが大事である。
  • 第三は、TPP交渉参加国に進出している日本企業が、現地で直面している障壁や問題点を業界ごとにリストアップすることである。政府への交渉団は、それらを交渉の「攻め弾」として使用するので、早々に作業を開始してほしい。

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  • 日本の対外経済政策として、TPPに参加しないことはあり得ないという合意の上で、本日は4つの議論があった。
  • 第一は、日本が包括的で高水準の協定、特に包括的関税撤廃という目標に応じるか否かについては、政治的意思が重要であるということ。
  • 第二は、FTAAP実現に向けて、TPPと並び、ASEAN+3、ASEAN+6、日中韓FTA、日EUEPAを進め、ルールを深化させていくことが重要であるということ。
  • 第三は、TPPについて今なお誤解に基づく懸念が多く、様々な形で国民に知ってもらうことが重要であるということ。
  • 第四は、TPPをきっかけとして、国を挙げて農業を国際競争力ある産業に育てていくことが重要であるということ。幾つかの品目を別にすれば日本の農業には競争力がある。生産者が少ないのではなく、経営者が少ないという点が重要だ。

アピール採択 伊藤元重氏(東京大学教授)/賛同人動画はこちら

アピール採択(伊藤元重 東京大学教授)

アピール案が紹介され、賛成多数(参加者からの盛大な拍手)で採択されました(アピールはこちら)。

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